98年7月15日号の特集記事紹介

●よい医療を選ぶ“眼”を養おう

ストップ・ザ・医者任せ役人任せ

消費者の視点に立って・・・とメコンは訴える

 「無い、無い」と言われてきたエイズ研究班の資料がまた出てきた。このことにジャーナリスト の櫻井よしこさんは「やはり情報はまだまだ隠されている。そして、この国はますます情報を国民の 目から遠ざけようとしている」と役人主導で作られている民事訴訟法の改定案や情報公開法の制定案 に危機感を募らせている。こうしたことを背景に「医療消費者ネットワーク・MECON(メコン)」 (代表世話人・清水とよ子さん)では、これからは患者も、よい医療を選ぶ“眼”を養っておく必要 があると、日頃から医療情報に関心を持つよう訴えている。何事も医者まかせ、役人まかせの医療では もうやっていけない。医療ビックバンはすでに始まっているのだ。


近藤 誠氏 櫻井よしこさん

 ――幼い娘が、慢性腎盂腎炎の治療で大学病院に通っている。ある日突然『手術する』と告げられて 心配になり、病状の変化となぜ手術になったのかを聞いたところ、教授が怒りだした。
 こんな相談が「医療消費者ネットワーク・MECON(メコン)」にはよく届くという。これに対し メコンは、「娘の手術を前に真剣に説明を望んでいるのだから、その気持ちをがっちり受けとめて質問 に答えるのが、癒しのプロとしての医師の責務ではないか」と、インフォームド・コンセントの重要性 をわかりやすく指摘している。
 医療消費者ネットワーク・MECONが、先ごろ「二十一世紀医療トーク・『がんと闘うな』その後 と情報公開のあり方」と題して開催した講演会では、四百名余りの一般人が参加して講師として出席し た近藤誠(慶応大学医学部講師・放射線科)氏とフリージャーナリストで薬害エイズ問題に詳しい櫻井 よしこさんの二人の話に聞き入っていた。
 このなかで近藤氏は、欧米ではすでに一般的になっていることや、がんの専門家ならば気付くはずの 外国の臨床文献を日本の専門家はあまり積極的に公表せず、追試もしないのは患者に不利益をもたらす のではないかと指摘した。
 そして、会場からの「情報が正しいかどうかの見極め方につて」の質問に対して、近藤氏は、「その 情報に矛盾がないかどうかを見極める目をもつこと、私の話も含めてあらゆる情報に疑問を持つことが 大切」とした。さらに、「専門家は、専門家としての常識をもっと一般人にも広める努力が必要だ」と 指摘した。
 つづいて、櫻井氏は、薬害エイズに関する裁判所の和解勧告が論議されていた九五年から九六年にか けて、厚生省をはじめとするすべての省庁で、ある法案の作成が急に進められていた事情を明らかにす る。
 それは、民事訴訟法の改訂案(文書提出命令の改訂)であり、情報公開法の制定であり、新感染症予 防法案であった。その時、専門委員が提出した法案には無かった文言が、国会審議の間際になって追加 されて提出された。それは、『ある特定の情報を公開するかどうかの決定は行政府の長が決める』とい う意味の文言で、その情報を公開するかどうかは、その情報をつかんでいる行政府の長、つまり大臣が 判断するというのである。こうして情報公開の趣旨からは全く逆行する意図があったとしか思えない文 言が官僚側から追加されたのであった。
 櫻井氏は「薬害エイズ問題であれだけ国民に迷惑をかけたのに、この国のお役人というのは全く反省 していないんだなと思いました」と情報公開が国民の手から遠のくことに強い危機感を訴えた。
 今回発見された厚生省エイズ研究班の録音テープというのは九六年の夏に地検に押収されたもので、 押収品目録があるといわれている。当時厚生大臣だったのは菅直人氏であるが、菅氏がこれを知ってい たかどうかは分からないが、直接指揮して情報を引き出した本人であることは間違いない。
 いずれにせよ、国民の権利を守るためにある法律が、逆に国民を管理するための道具にされてしまっ たのでは本末転倒も甚だしいというべきである。

自立した患者になるために


 「医療消費者ネットワーク・MECON(Medical Consumer Network)」(代表世話人・清水とよ子 さん)=写真=は、1994年1月に主婦らが集まって発足したボランティア団体で、医療サービスを受け る消費者としての視点から医療を考え、行動しようというのがねらい。発足当初は医療機関との対決姿 勢が前面に出る印象があったが、現在は患者の立場を考えようとしている医師と率直に医療問題を話し 合う場を設けるなど、自立した患者になるための生涯学習はとくに注目されており、このほかにも年四 回発行のメコンニュース、苦情110番なども週二回開設している。
医療消費者ネットワーク・MECON
 東京都杉並区松庵3-32-11-403
 電話/FAX 03-3332-8119


(C) IRYOU SHIMPO 1998


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