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肥満児の急増に東欧諸国が悩んでいる。そんな記事(朝日新聞3月16日付)を読むと、時の流れに演出された有為転変があまりにも
皮肉に迫ってくるのを覚える。
粗食の時代が長かった東欧では「肥満」が豊かさの象徴だった。やがてベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦に風穴があけられ、一挙に明るさを
取り戻していった。そしていま、粗食を強いられた時代の劇的な転換と引き換えに東欧諸国は「肥満の急増」に悩んでいるのである。
チャウシェスク政権崩壊後のルーマニアでは、ブカレストの研究機関の調査によると、国民の4人に1人が肥満で、5人に1人が生活習慣病のリスクを抱えている
という。その原因はアメリカ食文化のシンボルともいえるファストフード店が急増し、高カロリー食品を安く食べる習慣が根付いたからと指摘する。
「週4日はファストフードで夕食を済ますという親子=ブカレストで」といった説明のついた写真を見ると、それはそのままアメリカでおなじみの風景に重なって
いく。
その風景とは片手ではもてないような大きい紙コップに満たされた清涼飲料水を痛飲しながら巨大なハンバーグを口いっぱいに頬張る…。彼らは一様に“堂々
たる”肥満体なのだ。
米国・ニューヨーク州では肥満につながる高カロリーの飲み物に1缶につき1セントの通称“肥満税”を課税する案が審議に入っており、英国ではドーナツ5個までは
「外食」とみなし、課税の対象になっている。
一方、ルーマニアではこの1月に、業界の反発を押し切って、カロリーだけが高くて満腹感を目的とするスナック菓子に、いわゆる“ジャンクフード税”の導入を
発表した。そしてブルガリアは昨秋、全国の学校の食堂や売店からスナック菓子、清涼飲料水を撤去させたという。
日本も例外ではない。健康志向が追い風となって缶コーヒーは“甘さ控えめ戦略”が加速、微糖缶が増え、糖類ゼロの紅茶飲料も復活してきた。
いまや肥満問題は国民の健康をめぐる大きなテーマの一つだ。これを克服するには「肥満は病気である」ことの自覚が必要だという。
肥満に伴う高血圧、高血糖、脂質異常の一つ一つの症状は軽くても、二つ三つと重なるとドミノ倒しのように次々と異常が起き、重病に至る。これを慶大病院・
伊藤裕教授は「メタボリックドミノ」と名付け、このような「隠れメタボ」や「隠れ肥満」は高リスクを伴うと警鐘を鳴らす。
「隠れ肥満」とは外見は普通で腹囲も標準だか、体脂肪が多い人をいうが、「自分はやせているから大丈夫」という思い込みが危険を招く。特に若い女性が
要注意なのはこのためである。なによりも食事をないがしろにすることが、脂肪率増につながるのだ。「ダイエット即食べない」ことではない。減量法に王道は
ないのである。
かつて粗食の時代、「肥満」は豊かさの象徴だったが、いまや飽食の時代、「肥満」は医療費6割増(全国健保協会・分析)の高リスク病「メタボ」の象徴で
あることを肝に銘じたいものである。
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