2014年2月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★行き場のない雑魚寝の老後に活路を
   

 団塊の世代はあと10年ほどで、ぞくぞくリタイアし、東京、大阪、神奈川、福岡など大都市部を中心に、高齢化が進む。2025年には 65歳以上の高齢者が3割を超えるという。その老後には大きな不安だけが待っており、医療や介護の提供が追い付かず、いわゆる“2025年 問題”が「在宅医療と看取(みと)り」というテーマに凝集されて迫ってくる。高齢者は行き場がなくなってしまうのである。
 特別老人ホームはいつ順番がくるのか見当がつかない入所待ちだし、有料老人ホームは高くてまずは経済的な条件で文句なしにシャトアウト されてしまう。そもそも老人を収容する施設なんてないのでは!?と思いたくなる。

 通称「お泊まりデー」と言われる施設がある。昼に自宅から通うデーサービスの事業なのだが、ここに泊まり続ける高齢者がいるのだ。
 「通い」なのにそれを無視して「泊まり」の常連になってしまう人たちー。これに対応する職員は夜勤が1人だけだ。その惨状がおもいやられる晩800円の 宿泊費を払って泊まってしまう。こうして老女の隣りのベットには80歳代の。
 やってくる高齢者は狭い部屋に詰め込まれるのだが、1男性が横になっている。
 まさにそこは、おむつの交換をするにもカーテンの仕切りもない雑魚寝(ざこね)なのだ。「在宅医療」は家族の介護がないと、とてもできないのである。 先に触れた都市部の県は2025年には75歳以上の高齢者が2010年の2倍近くに増えるという過酷な状況がそこには厳然とたちはだかる。

 惨たる状態に圧倒されて絶望しているだけでは何の解決にもならない。こんな時、神奈川県住宅供給公社の動きが大きな希望の灯となって励ましてくれる。 そんな団地のひとつに、相武台団地(神奈川県相模原市南区)がある。この団地では若返りと再生の切り札として団地の再生化に活路を見出そうとしているのである。
 昨年12月、団地の一角に4階建ての「コンチェラート相武台」という4階建ての複合施設を7億円かけてたてた。
 1階にはデイサービスや在宅医療、介護施設、訪問看護などをそろえ、2〜4階は1〜2人用のサービス付き高齢者向け住宅とし、ここに1人暮らしの高齢者に 移ってもらい、空いた部屋には子育て世代にはいってもらう。これが公社の描く団地再生の切り札だ。
 この団地が高度成長期の真っただ中で入居が始まった時には1万2千人が住み、小学校には急増のプレハブ校舎が並んだ。が、今の入居者は半分以下の約5千人 だ。しかしそんなことに滅入ることはない。公社はあいついで70年代後半に開発した若葉台団地(横浜市旭区)でも再生に取り組む計画だという。

 こうした“団地の再生”とはまるで違う風潮を東京の評判高い豪華・超高層マンションに見ることができる。彼らは同じ入居でも階層が1階でも高いところに 入居することへの奇妙な競争心に駆られているようなのである。入居者募集で「勝った」「負けた」の見栄を張って、人より高い階層に入居できるのをほくそ 笑んでいるようなのである。
 思えば高度成長期に募集された当時の団地に植栽された桜の樹はまだ苗木でしかなかった。それがいま、建物と同じ高さの100メートル余にまで育っているという。
 来春、この桜の樹々は団地の「コンチェラート」で老後の生活を送る高齢者を拍手で迎えてくれるのではないか。そうあってほしいものである。

 
 
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