2014年4月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★介護に“溶けない財源”!?という名の協力援軍
   

 消費税の税率が4月1日から5%から8%に。まさに17年ぶりの増税の刺激を受けて、増税前の駆け込み買い物は、まるで小学校の 運動会の催しにも似て、陽気でさえあった。
 だが、この陽気さと裏腹に8%税の使い道は「全額、社会保障(年金、医療、介護、子育て)に使うと決まっている。国も年々増加する社会 保障をまかない、国家財政を立て直すためのもの」と増税の意義を強調する。
 それでも社会保障のお金は足りない。政府の試算では消費税率を10%に上げても、財源不足は19.3兆円にのぼるのだ。
 重い税負担の対価として良質な公共サービスを提供できているのかーと、国はより鋭く問われ、これに真正面から応えねばならないことだ。トイレット・ペーパー を買いだめしていた主婦は「8%の街角」でこう言った。「増税分は無駄使いせず、有効に使ってほしい」と。
                    ◇
 拙稿が4月1日に、重苦しい消費税の話題を、なるべく明るく取り上げようとしている、まさにその時、翌2日の新聞にこんな大きな見出しが登場していた。
          「介護に最適、溶けないアイス」

 話題の主は関東学院大学人間環境部(横浜市)の3人の女子大生。「溶けないアイスクリーム」というテーマで研究した卒業論文をもとに新商品を誕生させ、 病院や高齢者施設で給食に出したら、「食べやすく、介護に最適」と好評を得た。
 卒論を書いたのは、昨年まで学生だった人たち。ゼミの指導を受ける松崎教授(栄養学)からヒントを得て「溶けないアイス」は出来ないものかと、2012年5月 から研究を始めた。アイスは「とろみ」があり、飲み込む際に誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」を起こしにくい。アイスは溶けるのが難点・溶けると誤嚥し やすく、なにより美味しくないのだ。そこで、学生たちは、まず保護食に使う「とろみ剤」の成分をメーカーごとに分析し、アイスに適した6種類を選び出して いった。
 初めはなかなか満足できるものがつくれなかった。「休んだのは、学校が閉まるお盆の時だけでした」といった熱中の仕方で取り組んだ。
 そうした卒論に取り組む学生たちのことを聞きつけた冷凍食品製造の「ヤヨイサンフーズ」(本社・東京都港区)商品企画課長が松崎教室を訪れ、商品化を提案、 8月に発売した。商品名は「溶けないアイス風デザート」。味はバニラ、チョコ、ストロベリー、あずき、抹茶の5種類。老人保健施設や病院に加え、いまや学校給食 でも使われているという。この「溶けないアイス」は「とろみ」があり、呑み込む際に誤って気管に入る誤嚥を起こしにくいという。
 こうして「介護に最適 溶けないアイス」のみごとな登場となった。
                    ◇
 4月1日に「増税」、2日に「溶けないアイス」ときたあと、3日には「チリで大地震発生」というニュースがとびこんできた。かつて1960年に発生したチリ大地震 を思い起こさせるものがあった。
 4月2日朝(日本時間)に南米チリをM8.2の巨大地震が襲い、太平洋を横断する気配の大津波発生となった。
 これに対して、大船渡(岩手)の人たちは、あわてず、さわがず、懼れなかった。さらに一昨年(2014年)の東日本を襲った巨大地震の津波による被害もあまり うけなかった。そのいずれも、1960年の津波が貴重な教訓となっていたからだった。この時、大船渡では裏山に逃げた人たちのなかから1人の死の犠牲をださな かったのである。
 この裏山は小学生にも容易に上れる山だ。みんなこの裏山に逃げた。それなのに、あの1960年の時のチリ地震による津波では、この裏山に逃げずに、犠牲者を だしてしまったのである。この時53名という最も多い犠牲者を出したのは大船渡だったのだ。この体験は大変貴重なものとなった。あの1960年のチリ津波の時は この山に逃げる事も知らず犠牲者を――。無念がいまさらのように甦ってくる。
                    ◇
 私たちはこの4月に1日、2日、3日とたて続けに大きな事件に集中的に直面してきた。このすべてが貴重な体験であり、教訓となっている。これをエイプリル・ フール(「万愚節」あるいは「四月馬鹿」)と簡単に片つけてしまっては、もったいない限りである。是非貴重な教訓とし、フル活用したいものだ。

 
 
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