2015年7月15日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★セカンドオピニオンを求めるときに必要なこと

 
  セカンドオピニオンには求める側も、求められる側にも一定のルールが必要だ。と いっても決して特別のことではなく極めて常識的なコミュニケーションの問題であ る。先ごろ、ある民間調査会社が行ったアンケートによれば「がん以外の病気でセカ ンドオピニオンを求められたら患者との信頼関係に悪い影響があるか」との問いに対 し、およそ8割の医師が「あまり気にしない」、「時代の流れとして当然」、「患者 さんの権利である」といった意見だったという(医師専用コミュニティサイト 「MedPeer」調べ)。

 がん以外の病気でセカンドオピニオンを考える…ということは一般的には少ないと思 われる。医学知識の少ない一般人は、直接いのちにかかわるような重大な病気でなけ れば、とりあえず医師の診断に対しあまり不安を抱くことはない。ところが、今やイ ンターネットを駆使すれば日進月歩の医療情報もさまざまなかたちで我々の手に入る ご時勢となった。当然のことながらそれらのどれもが正確で正しい情報とは限らな い。問題は情報の扱い方で、医療に限らず情報収集能力と情報分析能力はどちらが欠 けても具合が悪い。このアンケート調査の視点はその辺にあるようだ。

 昨今のように著名人から一般主婦までネットにブログを発信する情報過多のインター ネット社会では、しっかりした判断基準を持たない者にとっては、一度心配になりだ すと情報を集めれば集めるほどその心配は膨らみ続けるものだ。前出のアンケート調 査は、こうした社会の変化が反映して実施されたものかも知れない。つまり、さほど 重大でもない病気に対しても新聞、テレビ、インターネットから得た沢山の知識に惑 わされ、ちょっとした猜疑心から医師を信用できなくなるという患者の心理が反映さ れたものと筆者は考えている。ことに健康に関する問題はどこまで気をつければよい というものではないだけに素人にその判断は難しい。

 さて、医師も人間であるからあからさまに「あんたの診断だけではどうにも心配だ」 と、言われていい気持ちがするわけがない。また逆に、いくら患者の意見を尊重する といっても「いや、ごもっともです。それではさっそく他の医者を紹介しましょう」 と言われたのでは、それこそ二度とその医者を受診しようとは思わなくなるだろう。

 そこで重要になるのがお互いの信頼関係というわけである。まず大切なことは告げら れた診断に対して、患者の立場から「何が分からないのか」、「どんなことが不安な のか」を正確に主治医に伝えることだ。その上で、自分はどうしたいのかという希望 をはっきり伝えればよい。その際、人間としての礼儀を欠くような言動は厳に慎み、 誠意を持って質問すればまったく問題はない。そうすれば、多忙な診察の合間であっ ても親身に対応するのが医師としての義務であるからだ。そこまでしても意志の疎通 が図れないようであれば、それこそ見限って他の医師を探すべきだろう。要するにセ カンドオピニオンに存在する一定のルールとは、人間としてお互いに尊重し合うとい うことに尽きるのである。

 
 
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