待合室
2003年11月1日
 
コラム【待合室】は、
病院の待合室という特殊な空間に身を置いて「医療」を眺めています。
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 ★まるで人体実験だ! つい最近の昭和大学藤が丘病院(横浜)の事故など医療事故は後を絶たない。そんななかで、慈恵医大付属青戸病院(東京・葛飾)の事故は、腹立たしさの極めつきであった。前立腺がん摘出のための腹腔鏡手術で大ポカをやらかしたのである。この手術は高度先進医療で難度が高く熟練した技術が求められるもの。それを未熟な医師が担当したというのだ。そこで何が行われたのか。聞いてびっくり。担当医師は器具の使い方を知らず、マニュアルを横目に業者立会いのもとで執刀したというのだ。それにこの医師、これまで動物実験しかしたことがないというから背筋が凍る。まるで自動車教習所内での運転経験はあっても路上に出たこともないまま、いきなり運転マニュアルを頼りに高速道路を突っ走ってしまったようなものである。当然、3人の担当医師は逮捕されたが、慈恵医大病院の管理責任も同罪だ。
「今回は分院で起きたことで、ほかに専門医がいないのをいいことに…。功名心から無理した可能性も」(医大関係者)。こんなコメント、かつて聞いたこともない。
 
 ★サーズ・センサー サーズ(SARS)感染を1時間以内に判定出来る検査キットが厚労省、文科省の合同研究班が中心になって、開発に成功したというスグレモノ。厚労省は多くの試料を保管する香港の中文大学をはじめベトナムやフランスの研究機関と共同で精度を確認したあと、今冬にも空港の検疫所などで使用したいという。ノーモア・サーズへの有力な手段として期待は大きい。感染研の田代真久・ウイルス第3部長は「高額で特殊な機器はいらず用途は広い。この冬には間に合わせたい」と意気込んでいる。
 
 ★西ナイル熱・センサー これは米国で猛威をふるう感染症の西ナイル熱を逸早く察知するスグレモノ。それは機器ではなく何と、カラスなのである。人間への感染の前兆となるのがカラスの大量死。米国で人が感染する数ヶ月前にカラスに流行し、数10羽単位の死があいついだという。厚労省はこの現象に着目し、ウイルスの日本上陸を見極める体制をとるという。西ナイル熱はいつ日本に上陸してもおかしくないといわれているが、カラスの大量死を観察する「デッドバード・ネットワーク」によって新たな感染症に先手を打つ作戦である。
  
 ★アレルギー・センサー これはアレルギーが発症する体質かどうかを判別する「遺伝子検査キット」の開発に成功したというもの。これまでは大規模な実験機器で1〜2週間もかけて遺伝子の異常を判別していたが。このキットを使えば簡単に1日以内で結果がわかるというスグレモノ。血液を試薬に混ぜ、遺伝子に異常があれば試薬の色の変化がわかるもので、岐阜大医学部小児病態学の研究グループを中心にして開発が進められてきたもの。これが一般の病院などに普及すれば、予防に役立てられるようになるのは明らかであろう。 
 
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